学校じゃ教えてくれない科学的に正しいノートの取り方
「ノートは丁寧に書けば頭に入る」——そう信じて、黒板をそのまま写して終わりになっていませんか?
実はこの“写すだけノート”、心理学と教育学の研究では学習効率がかなり低いことがわかっています。
ここでは、なぜ写すだけでは伸びないのか、そしてどうすれば「記憶に残るノート」になるのかを、主要研究とともに整理します。
目次
なぜ「写すだけ」は伸びないのか
浅い処理(shallow processing)になりやすい
文字をただ写す行為は、意味の理解をほとんど伴わない“浅い処理”です。
心理学の「処理水準理論(Levels of processing)」では、意味づけが深いほど記憶が長持ちするとされています【Craik & Lockhart, 1972 / ScienceDirect】。
つまり、写しても理解していなければ、数日後にはほぼ消えます。
逐語的(verbatim)メモは理解を妨げる
プリンストン大学の研究では、PCでの打ち込みノートは速く書ける反面、逐語的になりがちで、概念理解テストの成績が下がることが確認されました【Mueller & Oppenheimer, 2014 / SAGE Journals】。
“たくさん書いた=覚えた”という錯覚が生まれやすいのも、このタイプです。
記銘の“生成性”が不足
ノートを写すだけでは、既に持っている知識と結びつける「生成的処理」が起きません。
過去のレビュー研究でも、要約・図解・関連づけなどを含む“生成的ノート”の方が学習効果が高いと報告されています【Kiewra, 1989 / SpringerLink】。
科学的に強いノートの作り方(5つの原則)
① 自分の言葉で要約する
文章を読んだら、その場で3行以内で要旨を自分の言葉で書く。
研究でも、要約・言い換えは浅い写しより記憶に残ることが示されています【Peper & Mayer, 1979 / ScienceDirect】。
② 「なぜ?」を説明する(自己説明効果)
問題や解説の一文ごとに「なぜそうなる?」「前提は?」と書き添えるだけで、理解と転移が大幅に伸びることが分かっています【Chi et al., 1994 / ScienceDirect】。
つまりノートは「考える場所」であって「写す場所」ではありません。
③ 図解・因果矢印でつなぐ
概念マップ(concept map)として、語句を□で囲み、→で関係性(因果・包含・対比)を描き出す。
これだけで複数概念の関連理解が向上すると報告されています【Nesbit & Adesope, 2006 / sfu.ca】。
④ 絵で覚える(Drawing effect)
単語や概念を簡単な絵にして描くと、文字だけより記憶率が倍近く向上します【Wammes et al., 2018 / SAGE Journals】。
棒人間+矢印+ラベルで十分。芸術性より“手を動かす”ことが鍵。
⑤ 完成ノートをレビューする
研究によると、教師が提供する良質ノートを活用し、そこに自分の疑問や関連メモを書き足した方が、自作ノートのみを復習するより高成績になることがあります【ERIC, 2018】。
「自分ノート+差分メモ」が最も効果的です。
実践テンプレート:HIKYO流「生成的ノート」5ステップ
- 3行要旨:段落を読んだら教科書を閉じ、自分の言葉で3行要約。
- なぜカード:「なぜ?」「他とどう違う?」を1問ずつ書き出す。
- 因果スケッチ:用語を□で囲み、→で関係を描く。
- ミニ図:式・過程・現象を10〜30秒でスケッチ。
- 想起チェック:ノートを閉じ、キーワードだけ見て口頭で再生→抜けを赤で補記。
この5ステップで、理解・記憶・想起練習を1セットで回すことができます。
よくある疑問Q&A
Q. 手書きじゃないとダメ?
A. 手段より「逐語写しを避ける工夫」が大切。
PCで取るなら「1段落50字上限」「箇条書きだけ」など制約を設けると、生成的処理が保たれます。
ただし研究では、手書きの方が概念問題の成績が良い傾向が確認されています【Mueller & Oppenheimer, 2014】。
Q. 絵が苦手なんですが…?
A. 棒人間+矢印で十分。
記憶効果は「視覚+意味+運動」の多重符号化によるものなので、うまさは関係ありません。
まとめ
「写すだけノート」は、勉強している気分にはなれても、脳にはほとんど残りません。
反対に、要約・説明・図解を少しずつ加えるだけで、同じ時間でも“定着率と理解度”が圧倒的に変わります。
勉強もスポーツも、「自分で考え、整理して、つなぐ」。
これがHIKYO流の“生成的ノート”です。
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参考文献
- Craik, F. I. M., & Lockhart, R. S. (1972). Levels of processing: A framework for memory research. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 11(6), 671–684. ScienceDirect
- Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014). The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking. Psychological Science, 25(6), 1159–1168. SAGE Journals
- Kiewra, K. A. (1989). Notetaking and review: The research and its implications. Instructional Science, 17, 233–249. SpringerLink
- Peper, R. J., & Mayer, R. E. (1979). Note taking as a generative activity. Journal of Educational Psychology, 71(4), 484–492. ScienceDirect
- Chi, M. T. H., De Leeuw, N., Chiu, M., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. ScienceDirect
- Nesbit, J. C., & Adesope, O. O. (2006). Learning With Concept and Knowledge Maps: A Meta-Analysis. Review of Educational Research, 76(3), 413–448. sfu.ca PDF
- Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2018). The surprisingly powerful influence of drawing on memory. Current Directions in Psychological Science, 27(5), 302–308. SAGE Journals
- Mueller, J. (2018). Note This: How to Improve Student Note Taking. ERIC ED588353. ERIC